日本歯科DNA研究会
DENTAL DNA NEWS Vol.2

 
President Message

日本歯科DNA研究会会長
松尾 通

 日本歯科DNA研究会が設立されてから1年が経過しました。その間、4回のワークショップを開催し、60名のDNAコレクターが誕生しました。
 一部のコレクターは、既に積極的な活動を開始し、本会のプログラムである(1)DNAバンキング(DNA鑑定及び保存)、(2)DNAファイル(企業向けリスク管理プログラム)、(3)家庭裁判所からの依頼による親子鑑定などを行っています。なかでも特筆すべきことは、日本の代表的企業であるトヨタグループの会社が、社員のリスク管理のためにDNAファイルを採用したことです。このニュースは、トピックスとしてTV、新聞等の大手メディアに大きく取り上げられました。
 DNAファイルはDNAコレクターが、会社の社員からDNAを採取し、一検体を会社が、残りの検体を社員が保管し、海外派遣などのリスク管理に備えようとするものです。
 その際の個人情報保護に関しても、当研究会では提案を行っています。
 さらにある県の歯科医師会が、本会の提案する「DNAカルテ」というプログラムを、新規プロジェクトとして、採用の方向で検討するというニュースも入って参りました。
 なおDNAコレクターは、当面人口20万人に1人の養成を目標にしています。例えば東京都の場合、人口は1220万人ですから、61名の定数となります。地域によってはまだ空白がありますので、会員の皆様にコレクター候補者の紹介、推せんをお願いします。
 10月5日には、本会初の公開講座「再生医療とDNA」を開催します。トップスピーカーを迎え、時代の先端を担う講演会に、スタッフの皆様共々ご参加下さるようご案内申し上げます。



NHKスペシャル 「驚異の小宇宙・人体III〜遺伝子・DNA」を制作して

 林 勝彦

Q:番組のプロデューサーに問う。企画立案の動機は何か?

1986年に大型のNHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」のプロジェクトリーダーをまかせられた時が源泉になる。番組のキャッチコピーは、「限りなきミクロへの接近─そこに生命35億年の神秘を見る」。3年間かけて、貯蔵や心臓など6本のシリーズを制作した。一個の細胞にこだわったドキュメンタリーなど世界のテレビ界でも誰れも挑戦していなかった為である。'93年には「人体・II〜脳と心」(60分×6本)を制作。米国は90年代を「脳の10年」と位置づけブレインサイエンスに力を入れていた。キャッチコピーは「脳と心を知ることは自分自身を知ることである」とし、脳に障害を持ちながらも前向きに生きる主人公を追い、記憶や知覚の問題を“サイエンスヒューマンドキュメンタリーの手法で描いた。「人体」シリーズはミクロの視点で細胞と人間をみつめてきたわけだが、'99年に放送した「人体・III」(50分×6本)では生命の根源、遺伝子・DNAに迫りたいと思ったのが動機だ。


Q:「人体・III」の番組のねらいは何か?

海外共同製作国を募集するパンフレットに次のように書いた。「人間の運命を科学で知りうる時代に到達した。私はどこからきて、どのような病気にかかり、いつ死を迎えるのか…。その鍵を握るのが遺伝子・DNA。20世紀生物学上の最大の発見・DNAの構造解明から約50年。国際プロジェクト“ヒトゲノム計画”は2003年迄に、60億文字分に相当する人体の設計図を解読しようとしている。マンハッタン計画・アポロ計画に次ぐビッグサイエンスである。その急速な進展は生命誕生の秘密、ガンや老化のしくみ、死のプログラムまでをも明らかにしつつある。今、私たちは人類史上初めて生命の全容を目のあたりにしようとしている。
 サイエンスは技術と産業を生む。腐りにくいトマトなどのバイオ商品。DNA診断に遺伝子治療。大腸菌を工場代りに人類に有用な薬を次々に生み出すバイオテクノロジーは、IT産業と並ぶ二大有望株だけにこのテーマはジャーナリステックかつ本質的な国際的関心事なのだ。」海外共同製作国は米国のデイスカバリチャンネルと決まり、予想以上の金額を出費してくれることになった。番組のキャッチは「21世紀への最良の贈り物─それは多様性に富む遺伝子・DNA」と決めた。


Q:6本シリーズの番組内容は何か?

(1)『生命の暗号を解読せよ〜ヒトの設計図』人体を形づくる遺伝子はヒトとハエ、ブタとの間でもほとんど差がない。一体、何が違いを作るのか?その秘密を“ホメオボックス遺伝子”に焦点をあて生命の神秘を探る。(2)『つきとめよ、ガン発生の謎〜病気の設計図』ガンの50%は“P53遺伝子”の異常で起る。何故か?その仕組みをCGを駆使して描くとともに、オーダーメイド医療にも直結する“DNAチップ”など知られざる先端科学・医療も紹介する。(3)『日本人のルーツを探れ〜人類の設計図』アイヌの血を引くトンコリ奏者とアンデスに住む先住民を“ミトコンドリアDNA”に着目し探ってゆくと意外性に富む事実が明らかになってゆく。(4)『命を刻む時計の秘密〜老化と死の設計図』若くして死を迎える早老症の子供たち。一方で長寿を誇る沖縄の人たち。命のロウソク“テロメアDNA”に着目し老化と死のプログラムを見てゆく。(5)『秘められたパワーを発揮せよ〜精神の設計図』何がヒトの性格や行動を決めているのか?─卵生三つ子を追うとともに“好奇心遺伝子”も紹介していく。(6)『パンドラの箱は開かれた〜未来人の設計図』将来、遺伝子を思いのままに組み合わせて作る“デザイナーチャイルド”の誕生を予言する科学者もいる。最終回は遺伝子操作が私たちの近未来に与える衝撃を予測し、未来人の設計図を考える。以上が6本シリーズの内容だ。


Q:21世紀は遺伝子・DNAの時代といわれているがどう思うか?

同感。そう思ったから子供にもわかってもらえる映像を重視し、番組を企画・制作した。先駆的であった為、放送時点は早すぎたのかもしれない。しかし、放送後、米国大統領や英国首相による「ヒトゲノム」についての声明や遺伝子情報が毎日のように各メディアに登場するようになり重要性が認識されるようになった。「プロテオニクス」「バイオインフォマティクス」も注目され、田中耕一氏の仕事もゲノム創薬などに生かされている。すでにDNAチップは実用化しつつあり、この分野だけでも2010年には世界で400億$の市場になるとみられている。最近、日本の科学技術政策の方向性を決める最高議決機関「総合科学技術会議」から一枚のFAXが届いた。私が制作した遺伝子・DNAのCG映像を小泉首相に説明する為使用させて欲しいとの申し入れであった。日本は国是として科学技術創造立国を平成7年から標榜している。それだけに倫理問題に配慮しつつこの科学・技術をあらゆる面で産業化し社会に役立てて欲しいと強く願っている。

林 勝彦 プロフィール

1943年生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業後、1965年NHKに入局。科学産業番組部、NHKスペシャル番組部などでディレクター、プロデューサーとして主に科学・環境・医学番組を制作。
現在、NHKエネンタープライズ21 エグゼクティブプロデューサー。

・東京大学先端科学技術研究センター客員教授を歴任(1998年〜3年間)
・文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会委員ほか。

主な作品に、日本最初の環境教育番組「ぼくらの地球」(1972年)、教育テレビスペシャル「生命科学の驚異」(3本シリーズ)(1980年)、NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」(1989年)「人体II〜脳と心」(1993)「人体III〜遺伝・DNA」(1999年)(計20本シリーズ教育番組国際コンクール日本賞グランプリなど内外の受賞多数)「マルチメディア・人体/CD-ROM」(2枚1996年)(ニューヨークフェスティバル優秀賞他)等を通して、“いのち”の問題を一貫して追及している。

○受賞作
NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体III〜遺伝・DNA」第4集 命を刻む時計の秘密〜老化と死の設計図〜(1999.8.9)
・第17回国際科学番組フェスティバル科学映像賞(通称:ユネスコ賞)
・第43回ザ・ニューヨーク・フェスティバルズ2000/科学部門ゴールドワールドメダル
・第1回北京国際科学映像祭/「医学・健康部門」金賞
・第41回科学技術映像祭/科学技術長官賞

○共同執筆の著書に・NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」、「これが脳低温療法だ」、「安楽死」、「知られざる巨大技術・原子力」(NHK出版)等多数

○東京芸術大学、慶應義塾大学、北里大学などでの特別講議の他に、NHK文化センター、NHK研修センターなどでの講演多数。



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