病診連携
松 尾  通

 東京の城南地区、世田谷区、目黒区、品川区、大田区の4区7歯科医師会はこの10年間、病診連携に取り組んでいる。その中核にあるのが東京都立荏原病院だ。
 荏原病院の歯科口腔外科医長の佐野晴男先生は精力的に病診連携を推進し、地域の多くの連携医から高い評価が与えられている。
 全国的にも城南の歯科医療連携は知られ、病診連携のモデルケースとして、見学者は後を絶たない。
 佐野先生の明るく、親切な人柄と地域の開業医と共存、共栄をはかるポリシーに、多くの連携医は全幅の信頼を寄せ、自分たちの駆け込み寺だと言わしめる。理想的な病診連携は、医科の分野からも注目され、参考にされている状況だ。
 荏原病院の広報活動に「連携便り」の発行がある。
 平成8年以来、佐野先生はそれに歯科のコラムを掲載していて、これがまた面白くタメになる。
 今般このコラムを中心にまとめた「病診連携まっしぐら」という本が出た。(医歯薬出版社=2300円)
 手に取ってみたが、病診連携のエピソードが満載され、実に楽しい。この冬休み一読をお勧めする。

 一例をあげよう。
 「逆紹介」「病院歯科共同治療管理料」という言葉がある。いずれも社会保険に入っているが、もともと病診連携モデルから生まれた荏原病院のオリジナルだ。
 逆紹介は紹介状なしで病院へ訪れた患者を住居近くの診療所へ逆に紹介するシステムを言い、現に月10〜15件を開業医へ送っている。
 後者は病院歯科へかかりつけ歯科医が患者と共に訪れ、協同で治療した際紹介元、紹介先の両方が診療報酬を算定できることをいう。
 いずれも病院と診療所が顔の見える緊密な連携のもとで、共に存続できることを念頭に置いている。

 混合診療はどうやら見送られることになりそうだが、代わって浮上してきたのが特定療養費制度の拡充である。
 抗がん剤22品目の特定療養費化は本年4月認可されているが、今後は新薬を中心に認可申請が増加することが予想される。
 来年4月からは、個人情報保護法が施行される。カルテ、介護分野の個人情報をどう保護するか、また頭痛のタネが増える。保険会社は早速個人情報漏えいに関する新しい保険を売り出した。
 地区歯科医師会で行っている保険のレセプト整備のあり方も問われることになろう。

 東京医科歯科大学川渕孝一教授「歯科医療再生のストラテジー」も興味深い本だ。(医学情報社=1200円)
 特に財源面からみた提言、MSA=メディカル・セービング・アカウントの創設が目を引いた。
 この制度はシンガポールに習ったものだが、メディセーブという医療貯蓄口座を開設し、その運用を国が行なう。通常の医療費はそこから支払われるが、他に高額な医療費をカバーするメディシールド、福祉を対象としたセーフティネットとしてのメディファンド。この三つのいわゆる3M制度で歯科医療は十分にカバーできるという提言だ。

日本歯科新聞 歯科情報学 2004年12月21日 より
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